FMPT裏話
恐怖の米国出張編(その1)
福田 徹
序 章 − 前 書 き
本編は、かの有名な「ふわっと '92(FMPT)」ミッションのためにひた
すらメリケン国に通い詰めた宇宙開発事業団(NASDA)とコントラクタの無
名の職員達の実話をもとに構成されています。ところで、「FMPT運用隊」と
はFMPTの実施のためにNASDAのなかに特別に編成された組織で、種子島
でのロケット打上げを「打上げ隊」が行っているのにならったものです。そこで
本編では、登場人物を「FMPT運用隊」の「隊員」という表現で呼ぶことにし
また。かく言う筆者もこの運用隊の企画班員としてFMPTミッションに参加し
ておりましたのでこの手の話の収集には有利な立場にあったわけです。
実話と言っても、もちろん、話を面白く、単純にするために多少の(かなりの
?)脚色はしてあります。モデルになった人は気分を害されると思いますが、こ
の、いかにもありそうな、そして、書くのも恥ずかしいような話を、あえて書き
残すことによって、後進の役に立つこともあろう、ということでお許し下さい。
いずれにせよ文責はすべて筆者にあります。
ところで、本編に収録した話は、通常なら消えていってしまうような、ふわっ
と'92の本来の業務 "以外" の記録です。テーマが業務以外なので、いきおい
話題はロジスティックス、「めし」と「あし」中心になっています。そして日米
の文化の違い。英語の恐怖。このような話を何故宇宙先端に載せるのか、という
声が聞こえてきそうですが、今後、宇宙分野ではますます国際ミッションが増え
ていくであろうことを考えれば、米国でのミッションの遂行のためにこの手の情
報も必ずや必要になるであろうと自己弁護しつつ、さて、話を進めることにしま
しょう。本編によって「ふわっと'92」実施部隊の苦闘の一端を知っていただ
ければ幸いです。
第1章 無上の楽しみ、それは食事
(レストランにて)
まずは食わねば勝負にならない。異国でのつらい仕事の合間の食事はそれはそ
れは楽しい時間であります。そして、食事は人間の欲望があらわになる場面でも
あります。従って、失敗談にもことかかない。と、いうことでまずはレストラン
編から始めましょう。
さて、朝はホテルで適当に済ませるか、抜いてしまうか(前夜の食べ過ぎの補
正!)、スーパーで買い込んでおいたパンをかじるか(部屋を出るのが面倒臭い
場合)ですが、とりあえずホテルのレストランに行って見ましょう。
さて、席について、ふと隣のテーブルを見ると、ぶ厚いホットケーキに蜂蜜を
たっぷりかけて食べていたりして、さすがに、こういうのにはついて行けない。
まず最初のカルチャーショック。朝食から甘いものを食べるのは(少なくとも筆
者としては)遠慮したい。そこで筆者の開発したワンパターン朝食は、コーヒー、
目玉焼き(体調により1個または2個)、ベーコンまたはソーセージ、フレンチ
・フライズ(日本で言うところのポテトフライ)、トースト(ホワイト・ブレッ
ドのトースト)、若干のサラダ(もしあれば)、グレープフルーツ・ジュース。
極力甘いものを避けると必然的にこうなります。
トーストのかわりにベーゲル(かた焼きのドーナツ型パン、ユダヤ人が好き。
)とかビスキット(味もそっけもないパン。イギリス風。なんとも説明が難しい
ので一度注文して下さい。)でも良いのですが、これらはたっぷりジェリーをつ
けないと美味しくないので、とりあえずパス。卵料理というとスクランブルド・
エッグがおなじみですが、これもちょっと甘いのでパス。ベーコンはカリカリで、
ソーセージはたいがいとても塩辛い。まあ許せる範囲です。それから、コーヒー
はおかわり自由、たっぷりと飲めますのでコーヒー好きの筆者としてはこれだけ
で満足。もっとも、胃の調子があまり良くないときはアイス・ティーにしますが。
昼はNASAのカフェテリアというのがお決まりのパターン。これがけっこう
安くて美味しい。ハンバーガーやサンドイッチを頼むときに、はさむ野菜の種類、
レタスとかトマトとかピクルスとかを言わなければならないので、ちょっと戸惑
いますが(面倒なら "Everything!"と叫ぶ。)、まあ、システムさえ理解すれば
簡単。そうそう、最初に "Here or go?"と聞かれてとまどったことがありました
が、字にしてみれば単純。ここで食うか、テイク・アウトかと聞かれたわけです
が。
どこのセンターのカフェテリアも似たり寄ったり、とは言え、多少の個性はあ
ります。例えば、ジョンソン宇宙センター(JSC)のカフェテリア。ここは観
光客も入って来てみやげ物も買えるのですが、ふと横を見ると有名な宇宙飛行士
が食べていたりします。マーシャル宇宙飛行センター(MSFC)は広大な陸軍
のレッドストーン兵器廠のなかにありますので、丘の中腹の軍の将校クラブまで
足をのばすと、なかなか豪勢な雰囲気でお昼が取れます。(途中ゲートも無いの
で勝手に行ける。) ケネディ宇宙センター(KSC)のVAB(アポロ時代に
作られたとてつもなく大きい整備組立棟、現在はシャトル用に使われている。)
近くのカフェテリアではFOD撲滅キャンペーンの展示がありました。FODは
Foreign object debris で、一瞬、外国人排斥かと思ってしまいますが、実は
作業区域に外部から持ち込まれた本来あってはならないゴミのことです。カフェ
テリアのトレー返却用ベルトコンベアの前の壁いっぱいに、KSCで発見された
FODの実物がビニール袋入りで展示されています。なかにはコーラの空き缶や
スポーツ用の靴下などまであって、職場規律の乱れを見る思いです。町工場なら
ともかく、シャトルとか衛星の整備をしているのですから。
さて、夕食はホテルで食べるにせよ、外に出るにせよ、ちゃんとしたレストラ
ンで食べることになります。
個々の話をすると長くなるので、一点だけ気がついた点を書くと、アメリカで
は「適当に」という概念がないということです。例えば、日本では、ビール、と
注文すると店にある適当な銘柄がでてきます。せいぜい生ビールか大瓶か、中瓶
か、といった自由度しかない。しかし、アメリカでは客が銘柄を指定できる。(
もっとも日本の店で銘柄が選べないのはビール会社の売り方によるのでしょうが。
) しかし、逆に言うと、アメリカでは「俺はこの銘柄が飲みたい」、という自
己主張が必要ということ。
例えば、サラダ・ドレッシングの選択。英会話学校ではステーキの焼き方(レ
アとかミディアムとかウェルダンとか。)の注文の会話は教えてくれるので、こ
の指定は皆できるのですが、ドレッシングの種類までは多分、教えてもらってい
ない。しかし、客がドレッシングの種類を指定しないと注文が前に進まないので
す。ここは「適当に見繕って」が通用しない世界なのです。感心するのは、どの
レストランでも、フレンチ、イタリアン、サウザンド・アイランドなどの各種サ
ラダ・ドレッシングが揃っていること。(筆者はブルー・チーズを愛用していま
す。) 自由度が確保されている限り、とにかく決め打ちしないといけない社会。
(たかがサラダで大げさかな?)
もっとも、ドイツ料理店でフレンチ・ドレッシングを頼んだら、「うちはジャ
ーマンだ!」、と言ってウェイターが怒っていましたが。(もちろん、これはウ
ェイター氏の冗談。)
┌────────────────┐
│One Point Lesson:ビールの注文 │
└────────────────┘
ビールを注文するときは、いきなり銘柄を言いましょう。銘柄を指定しないと
注文が完結しません。
自分の好みのビールを決めておくのも一法、いろいろ変えて飲むのも一法。た
いがいの店には主要ブランド(バドワイザー、コアーズ、ミラー、ミカロブ)の
普通と"light"、そのうちの何種類かは置いてあります。日本の流行が影響して
"Dry" がある場合もあります。チャイニーズだったらもちろんチンタオ(青島)!
あとはボトルで頼むか、ピッチャーで頼むか。ボトルの時は、言わないとグラ
スを持ってきてくれなかったりします。そう、アメリカ人はボトル(小瓶)をラ
ッパ飲みしますから。
(恐怖のオンライン予約)
相当に英語が達者になっても電話はいやなものです。面と向かいあったときの
無形のサインの情報量は意外に大きいのですが、これが無い。相手の言っている
ことをロストしても、面と向かっていれば、相手は、こいつはわかっていないな、
と気がついてくれるのですが、電話の場合、積極的に相手の言うことを止めない
とどんどんしゃべられてしまう。それと、相手が自分の言ったことをほんとに理
解しているのかどうか、これもたいへん不安なところ。だから電話でレストラン
の予約を入れても本当に思いどおり予約がとれているかどうか、不安をぬぐいさ
れない。
さて、フロリダのエプコット・センター。ここは、ディズニー・ワールドのい
くつかのテーマ・パークのなかでも比較的大人向けなのでKSC出張中の日曜日
に行く場所としてはポピュラーですが、エプコット・センターのなかのレストラ
ンで夕食を食べようとすると予約が必要になります。結構混んでいるので予約無
しではたいへん待たされてしまう。もともと時間の節約のため場内で食事をする
のでそれは避けたい。では、どう予約するか。
場内案内のパンフレットを読んでもレストランの電話番号が無い。はて、どう
したものか、さらにパンフレットを読んでみると、いくつかの場所に構内通信の
端末があって、そこからアクセスできるらしい。地図をたよりに探していくと、
何とCRT(ブラウン管)がずらりと並んでいるではありませんか。CRTの上
の文字を指でさわるとレストラン予約システムが起動、次は食べたい料理のジャ
ンルを選ぶ。さすがアメリカ、オンライン予約システムが実用になっているとは。
(AT&Tの提供による装置らしい。)一同感心することしきり。何より画面上
で選んでいくコンピュータの操作感覚はいつものパソコン仕事と変わらず、違和
感がない。しかも英語で喋らずに予約できる・・・と、誰もが内心はほっとした
わけであります。
とりあえず、軟弱に"JAPANESE"を選んでみよう。次は店名でも出てくるのかな
?と思った次の瞬間、画面に男の顔が大写しになって、話しかけてきます。
Hello, I'm John!
おっ、なかなか凝ったソフトじゃないか。ビデオを使ったハイブリッドか。と
ころが、何と画面の中のジョン氏はこちらの人数を知っているではありませんか。
A table for six?
CRTの上を良くみると、TVカメラがこっちを向いているではありませんか。
なんと! これはオンライン予約システムでも何でも無く、単なるTV電話だっ
たのです。画面上で"Restaurant"などと選ぶのは、所定のオペレータに電話番号
を使わずに接続するためだけの機能。コンピュータ相手と思いこんでいて、突然
人、それもアメリカ人相手になったことの動揺はかなりのものです。しかし、こ
こで逃げるわけにはいかない。ちょっと相談させてくれ、とか言って時間稼ぎを
しながら、気持ちを落ちつかせ、いつもと同じ、いやTVに写っているだけむし
ろ緊張気味の電話予約をしたのでした。
しかし、TV電話になった途端に逃げ出す日本人観光客もいるだろうな。
(フローズン・マルガリータ事件)
レストランに入っても、なかなか注文を通じさせるのに苦労するものです。席
に着いて、まずは飲物を注文しなければならないのですが、コーヒーと言って(
言ったつもりで)コーラが出て来るなどは極めて良くある話。まあ、店員はもと
もとまともに注文を聞くつもりはないとも言えますが。
所は、とある日本レストラン、と言っても、店には一切、日本人はいない。日
本語も通じない。「ベニハナ」スタイルの鉄板焼きで入り口には「シェフ」の写
真が飾ってあるのですが、名前を見るとキムさんとかパクさんとか、果てはサム
ライさんなどというのがあったりして。要は日本食を名乗っている韓国系の店な
のであります。その「シェフ」さん達が客の前でチャンチャカと芸を見せてくれ
るのですが、芸の話になると長くなるので、それは、また別項で。さて、その日
本レストランでステーキを食べようと、我が隊員達が入ってきます。
ウェイトレス:お飲物は何にいたしましょう?
隊員A:バッド
隊員B:クアーズ・ライト
隊員C:ミカロブ
隊員D:(ちょっと気取って)フローズン・マルガリータ
ウェイトレス:?
隊員D:フローズン・マルガリータ!
ウェイトレス:?
隊員D:フローズン・マルガリータ!!
英語に自信のある隊員Dは、一抹の不安を覚えながらも執拗に繰り返し注文し
た。自分の発音は間違いないはずだ。いや、アクセントがおかしいのかな? そ
れとも??
しばしの沈黙の後、ウェイトレス嬢曰く、
Sorry, I don't speak Japanese.
(カクテル・サバイバル・キット)
筆者はいささか酒好きなので(すでにアル中の域、と評する向きもあるようで
すが。)、やはり夜は1杯、となるのですが、帰りの運転があるのでレストラン
で飲むわけにはいかず、まあ、食前のビール1杯なら問題はないでしょうが(ネ
ズミ取り対処法参照)、ちょっと物足りない、そこで筆者はホテルのカクテル・
ラウンジに行くことになります。自分が泊まっているホテルなら帰りの足の心配
はないし、日本の高級ホテルのバーのように気取っていないし、我々が利用する
ような安モーテルにも結構ラウンジがありますから。
ラウンジで何を飲むか。筆者はカクテルです。日本に比べれば安いし、量も多
いし、とにかくおいしい。お値段は1杯3〜4ドルといったところです。それに
つまみも、せいぜいポテトチップスかピーナッツ程度しかないし、翌日のことも
思うと、ウイスキー水割りで深酒、というパターンは避けたい。そこでおしゃれ
に(?)カクテル。
前の話で出てきた、フローズン・マルガリータ、これなどは結構ポピュラーで
ありまして、要はテキーラベースのカクテルなのですが、強くて、甘くて、なか
なか美味しい。クリアレイクのメキシコ料理店では1リッター10ドルなんての
がありましたし(フローズン・マルガリータのデキャンタ!)、ココビーチのイ
タリア料理店では「マグアリータ」なるもの、つまりマグカップ入りのマルガリ
ータ(フローズンでは無かった。)もあったりして、酒飲みにはこたえられませ
ん。もっとも1リッターも飲んだら、あとは保証のかぎりではありませんが。
しかし、カクテルで困るのは、あまり名前を知らない、ということではないで
しょうか。筆者など、最初の海外出張で、たったひとり某学会の大会に出席し、
学会主催の夜のカクテル・パーティに出たところまでは良かったのですが、さて、
パーティ会場の一角のバーの前で、注文しようにも、カクテルの名前など知らな
いので困り果て、結局、前の人と同じもの、と注文して切り抜けたという苦い(
?)記憶があります。あとで知人に聞いたら、カクテル・パーティといってもカ
クテルしか飲まないわけじゃない、ビールかワインを飲めばいいのさ、と教えて
くれましたが。
さて、皆で夕食後の1杯ということで、ラウンジに繰り込んだとき、某隊員が
海外旅行の「サバイバル・キット」なるものを持ってきました。数センチ角の虎
の巻、というかカンニング・ペーパーなのですが、海外旅行者向けの立派な商品
とおぼしきものです。そのなかに、ちゃんと「カクテル編」が入っています。よ
し、これで端から頼んでみよう。困ったのはラウンジのオヤジさん。
隊員 :×××(カクテルの名前は失念してしまいました。ひとつはモスコー
・ミュールだったかな?)
オヤジ:今時そんなもの飲む奴はいないよ。
隊員 :じゃあ○○○
オヤジ:その材料はもう売ってないぜ。
隊員 :それでは、△△△
オヤジ:おいおい、何を見ているんだ、ちょっと見せてくれよ。
おお、これはまた古いのばっかりだなぁ。
さて、そこでどうしたかと言うと、オヤジさん、やおらにカウンターの中の引
き出しを空けると、なんとカクテルの教科書らしき冊子を取り出して、俺は作っ
たことがないから味は保証しないよ、とか言いながらいろいろ作ってくれたので
ありました。しかも、試作なのでちょっと量が余ったのはサービス! さすがの
プロ根性でありました。
ところで、このオヤジさん、大変な野球狂で、ちょうど阪神タイガースから大
リーグに戻ったフィルダーが活躍していた時期ということで、日米野球談義が大
いに盛り上がり、楽しく夜は更けていったのでありました。
┌────────────────────┐
│One Point Lesson:カクテルの注文は難しい│
└────────────────────┘
筆者の個人的経験では、一番通じにくいカクテル(の名前)はマンハッタンで
す。manhattan、発音記号では[maenhaetn]でして、なんとアク
セントが「ハ」にあります。しいてカタカナ表記すると「マンハトン」でしょう
か。日本語流に「マンハッタン」と言うと、つまりhaeにアクセントがいかず、
tnが母音入りのtanになるとまず理解してくれません。しかし、これらのこ
とを十分に意識して発音しても、一発で通じたためしがない。ニューヨークの島
の名前で云々、と説明する羽目になったりして。(さえない日本人がそんなもの
を頼むわけはないという先入観があるのかも知れませんが。) でも、マンハッ
タンはなかなか美味しいのです。(ウイスキーとベルモットのカクテルで結構ド
ライ。ドライ・ベルモットを使ったドライ・マンハッタンならさらにハード。)
そういえば、アラバマにちなんだ(named after Alabama)カクテルを作って
くれ、と言ったら「B−52」(たしかカルアとアルマニャックとアイリッシュ
・クリームのカクテルで、甘ったるくてものすごく強い)が出てきたことがあり
ましたっけ。あとで気付いたのですが「Alabama」じゃなくて爆撃機「a bomber
」にちなんだカクテルを出してくれたわけです。
(フォア・ハンバーガー、プリーーーズ)
なかなか注文が通じない話の続き。ドライブ・スルーの店はなかなか慣れると
便利なのですが、車の中から注文するだけ、ややコミュニケーションが遠い。
さて、あるとき、某隊員は、ハンバーガーを4個買おうと、とあるドライブ・ス
ルーのハンバーガー屋に車で乗り付けた。同僚の分も買ってくるよう頼まれたの
であります。
隊員:フォア・ハンバーガー・プリーズ
店員:(無言で)ハンバーガーを1個渡す。
隊員:(やや、動揺しながらも、後ろから車も来ているので、しようがない、
もうひとまわりするか、と決意。)
さて、店の前を1周して、
隊員:スリー・ハンバーガー・プリーズ
店員:(無言で)ハンバーガーを渡す。やはり1個。
隊員:(さらに動揺しながらも、気が弱いので喧嘩もできず、もう1周を決意。
)
店の前をもう1周して、
隊員:ツー・ハンバーガー・プリーズ
店員:(無言で)ハンバーガーを渡す。やはり1個。
状況は改善されなかった。店員は全く隊員の言うことを聞いていない。
もうやけ気味である。
3周目をまわった。あと1個買えば良いのだ。
隊員:ワン・ハンバーガー・プリーズ
後に、この話は、「3べん廻ってワンと言え」事件と名付けられた。
(待ち合わせは難しい)
日本人同士でも言葉が通じない話。さて、ある日の午後、オフィスで隊員Pと
Qがハチ合わせになりました。
隊員P:あれっ、ずっと待ってたんだけど、どうしたの。
隊員Q:えーっ、ちゃんと約束どおり行ったのに店にいなかったじゃないか。
二人は昼飯を一緒に食べようとレストランで待ち合わせをしていたのですが、
どうやらうまく逢えなかったらしい。
隊員P:僕は30分も待ってたんだ。
隊員Q:ユニバーシティ・ドライブの"ChiChi"だろ。ちゃんと12時半
に行ったけど見えなかったぞ。
隊員P:おかしいな、ユニバーシティの右の"Chili"で間違いないはずだ
けど。
字を見ている読者諸兄には、店の違いはすぐわかるのですが、当の二人はまだ
気付いていない。
隊員Q:そう。ChiChi。店も狭いし見えないわけはない。しょうがない
んで一人で食べたんだ。
隊員P:あのあたりにはChiliはひとつしかないはずだけどなあ。
隊員Q:えっえっ、ChiChiだろ。
隊員P:Chi・li。
隊員Q:C・H・I・C・H・I
隊員P:違う違う! C・H・I・L・I
隊員Q:えーっ、そうだったのか!
とりあえず二人の友情にひびは入らずに済んだようですが、あとでわかったの
は、このふたつのレストラン、「チチ」と「チリ」はお隣り同士だったのでした。
これじゃあいくら場所を教えておいても間違えるわけだ。
ヒアリングは難しいですな。ご同輩。
(トゥゲザー事件)
文化の違い(?)がおもわぬ誤解を生む話。ところは、ある川沿いに立つシー
フード・レストラン。かたどおり飲物も出てきて、さて食べる物の注文。ウェイ
トレスは明るくてなかなかかわいいヤンキー娘。一同気を良くしていろいろ注文
したりして、まずは楽しい夕食の始まりです。スープが来て、サラダが運ばれて
来ます。
ところが、突然、何を思ったか隊員Rが文句を言い始めました。
隊員R:だいたい、この料理が順番に出て来るのは好きじゃない。日本ではみ
んな一緒に食べるんだから、一緒に持って来させよう。
まあ、突然里心がついたのでしょうか。他の隊員はもちろん無視。郷に入って
は郷に従え。ほっとけ、ほっとけ。しかし隊員Rはあきらめない。ウェイトレス
を呼んで、
I'd like to eat salad and lobster togheter.
とやった。その途端、ウェイトレス嬢は、とんでもない、といった態度で
No! No! と拒否するではありませんか。
隊員Rは、さらに、これは日本の習慣だとかなんだとか、ごちゃごちゃ説明を
始めた。すると、ウェイトレス嬢はますます逃げ腰になって、大きな身振りで駄
目駄目と言う。隊員Rの言わんとすることを知っている他の隊員は、そんなに嫌
がることもないのにと思って見ていたのですが、はっと気がついた。
要は、最初の要求が「ネエチャンと一緒に(togeter)食べたいな」と聞こえ
たわけです。これでは、ウェイトレス嬢が恐怖するのも道理。日本の伝統にのっ
とってゲイシャ・ガールの役をさせられる! ま、これは文化の違いと言うより
言い方の拙さかな?(at the same time とでも言っておけば良かった。それに
要求のポイントは「メイン・ディッシュを早く持って来い」にあるはず。我々の
稚拙な英語では具体的な要求を直截に言わないとなかなか通じない。これはNA
SAとの交渉でも同じ。)
ようやく客の要求を理解したウェイトレス嬢の答えは、もちろん、「料理がで
きたら持ってきます。」 システムが変わるわけがない。
とかく、意を通じさせるのは難しいもの。
(ビール飲むの? 今回は見逃してあげるわ)
私は、日本人は(あるいはアジア人は)幼形成熟の傾向が強いのではないかと
思っています。要は若く見える、と言うか大人でも幼く見える。まあ人類自体が
幼形成熟の種なので、一段と進化の進んだ亜種という見方もできますが、進んだ
進化がいいかどうかは別問題。特殊化が進んでいるのは進化の袋小路に近づいて
いるとも言えますから。
閑話休題。髭をはやさないとポルノを売ってくれないなどと冗談を言いますが、
ポルノは無くても済むが、酒はそうはいかない(??)。
ウェイトレスにおばあさんばかり雇っていることで有名なステーキ・レストラ
ンでの話。たまたま比較的「若く見える」隊員がそろってしまった。まず、ビー
ルを注文する。
隊員某:バッド。ピッチャーで。
ウェイトレス:お酒は21歳以上じゃないと飲めないのよね。
隊員某:だから、ビール。
ウェイトレス(老)嬢は、しぶしぶ、といった体で注文を取り、数歩歩いたと
ころで立ち止まり、思い返したようにテーブルに戻って来た。
ウェイトレス:今回は見逃してあげるわ。
隊員某:(ムッとして)僕らはみんな21歳以上だ。
ウェイトレス:わかってるって。
完全に未成年だと思われている。思いあまった隊員達はパスポートを取り出し
てウェイトレスに見せたのであった。どうだ。もっとも、全員21歳以上ではな
く、全員30歳以上であったが。
(命がけのレストラン探し)
この話は、本編中いくつかある恐い話のうちでもかなりヤバい話であります。
所はハンツビル、ここのダウンタウンに「T」という有名なステーキ屋がありま
す。ダウンタウン、と言ってもたいした街ではないのですが、一方通行があった
りして、一応はややこしい。
さて、隊員2人組、仕事も終わって「T」に行こう、ということに相談がまと
まり、レンタカーを走らせます。ところが、二人ともいまいち店の位置の記憶が
あいまい。案の定、ダウンタウンのなかで迷ってしまいました。夜になったので
道も暗くて良く見えない。そのうちについに行き止まりに突き当たってしまいま
した。運の悪いことには、ちょっと前にハンツビルを竜巻が襲って、その被害地
域が立ち入り禁止になっていたのです。
しょうがない、Uターンして戻ろう、と思った刹那、後方で赤青のライトがま
ばゆく光りました。パトカーに捕まったのです。
あとから考えれば、被災地からの盗奪を警戒してパトカーが張っていたわけで
すが、こちらはあくまでレストラン探しの気軽な気持ち、警官側の心理など知る
由は無い。
パトカーからは警官が降りてきて近づいてきます。とりあえず、道を聞こうと、
隊員二人も車を降りた。だって、道を聞くのに車まで来て貰うのは失礼じゃない
か。その瞬間、警官達の顔色が変わって、にわかに叫び始めました。ところが早
口の南部なまりでがなりたてるので何を言っているのか皆目見当がつかない。そ
のうちに、
・・・behind the door・・・
という言葉だけ聞き取れた。二人はまだ危険な立場に気付いていない。ああそう
か、ドアの後ろに行けばいいのか、と、開けたままにしていた車のドアの後ろに
廻ってしまった!
何と! 警官隊は何かに弾かれたようにパトカーの陰に飛び込んでいっせいに
銃を構えるではありませんか!
ここに至ってはじめて、二人は事態の深刻さを理解したのでありました。そう、
ドアの後ろに廻るのは銃撃戦の意志表示以外のなにものでもない。(アメ車のド
アには補強の鉄板が仕込んでありますから。)
これは手を上げて無抵抗の意志表示をするしかない。
恐る恐る警官達が近づいてきます。
おまえら、何をやってたんだ!
正直に言うしかない。
We're lost.
Could you tell us how to get to T restaurant?
あとでこの話をNASAの連中に話たら、真顔で言っていました。
「ハンツビルで良かったなあ、警官が訓練を受けているから。田舎だったら射
殺されたよ。」
┌────────────────────┐
│One Point Lesson:捕まり方 │
└────────────────────┘
走行中、後ろにぴったりとパトカーがくっついて、赤青のライトを点滅させた
ら止まれの合図。その時点ですでに捕まったのです。そうなったら速やかに路側
に寄せ、適当な空きのあるところに停車します。停車しないとカーチェイスにな
りますよ。停車したらくれぐれも車から出ないこと! さらに念を入れるなら不
用意に胸に手を入れないこと。とにかくあちらの警官さんは日夜、すぐぶっぱな
してくるような連中を相手にしてますからね。
ところで、IML−1のとき、あるドイツ人マネージャがケネディ宇宙センタ
ーの中でライト点滅パトカーに追いかけられたが、自分が捕まったとは夢にも思
わずそのまま突っ走っていき、最後はゲートが封鎖されていて御用になったとい
う話がありました。もっとも、普通なら逃亡したことをたっぷり絞られるところ
を、そのマネージャ氏、ヨーロッパにはそんな習慣は無いと言って頑張り通して
しまったとのことですが、さすがにヨーロッパ人は強い。
筆者も、マーシャル宇宙飛行センターのゲートを通って入構した直後、ふとバ
ックミラーを見たらライトを点滅させたパトカーにピタリと張り付かれていて肝
をつぶしたことがあります。あわてて減速したら、パトカーはあっと言う間に私
を抜き去り、すぐ前に走っていた車を捕まえました。私は、停車したパトカーと
捕まった車の脇をそろそろと通りすぎましたが、おとがめなし。私が捕まらなか
ったところを見ると容疑はスピード違反ではなく、カーパス不携帯かな? 前の
車との間に割り込む隙を空けさせるため私の車の後に付いたのでしょうが、まっ
たく人騒がせな奴め!
第2章 飛行機旅
(テキサスの大酒飲み)
そのとき、筆者はダラス/フォートワースに向かう機中にいました。午前中の
フライトでしたが、運良くファーストクラスにアップ・グレードしてもらったの
で、普通なら離陸前から一杯、というところですが、残念ながら、ダラスからす
ぐヒューストンに飛んでそちらで車を運転しなければならない。すなわち酔っぱ
らうわけにはいかない。我慢我慢。
隣の席に座ったのは、体格の良い、カウボーイハットでそれとわかるテキサス
男。なにやらカクテルを頼んで飲んでいる。離陸する頃には早くも2杯目。
そのうちに酔いがまわってきたか、私に、これは美味しいから飲んで見ろ、と
言う。スチュワーデスが持ってきたコップを差し出してちょっと飲めと言うのだ。
断っても悪いと思い(仕事でもそうだが、"差し"で向かい合うと体格で圧倒され
てしまう)、ひと口飲む。そうすると残りを飲みながら(!)いろいろと話かけ
てくる。聞くと南部で手広く商売しているらしく眼鏡のフレームなども卸してい
て、Nikonも扱っているとのこと。自宅はフォートワースの方向にあって、
馬も飼っているらしい。(相当な田舎らしいが) そうこうしているうちに飲物
を変える。ホットコーヒーにアイリッシュ・クリームのミニチュア瓶を1本ぶち
こんで飲む。これも飲んで見ろ、と言う。アルコールっぽくなくて酔っぱらうに
はいいかも知れない。これもどんどんおかわりが進んで、話も発展する。息子が
二人いて、ひとりは大学に行っているが、もうひとりは空軍のパイロット。大学
なんか行くよりパイロットの方が有望だ。何故かって? 軍を退役したら航空会
社のパイロットになってうんと稼げるからさ。親を助けて欲しいからな。わかる
? 宇宙飛行士なんかにはなって欲しくない。稼げないじゃないか。やっぱり稼
ぐなら民間のパイロットさ。ところで、空軍あがりのパイロットと海軍あがりの
パイロットはすぐ見分けがつくのを知ってるかい。海軍あがりはいつも狭いとこ
ろで降りてるから急角度で突っ込んで地面をハードにヒットする。空軍の飛行場
はどこもひろいからゆっくり降りるのさ。
さすがのテキサス男もコーヒーカクテルが4〜5杯目になっていよいよ呂律が
まわらなくなってきました。そうそう、日本のビジネスマンは奥さんと恋人のほ
かにゲイシャをひとりずつ持ってるんだろ。そんなのは大ぼらだって? そうか。
そういうのは bullshit って言うのさ!
いよいよ話が乱れて来たところで機は空港に滑り込み、the end。ところで、
この酒飲み氏、空港から自宅までは多分自分で運転するのでしょう。大丈夫だっ
たのかな。
これに限らずアメリカの国内線では話好きの人と乗り合わすことが結構ありま
す。楽しい話ばかりなら問題ないのですが、あるとき、隣に乗り合わせたご婦人、
自宅からシャトルの打上げが見られるとのこと。チャレンジャ事故の話になった
ら、そのときも見ていたとのことで急に涙ぐんでしまい、いささかこちらがあわ
てたこともありました。(日本人は素面ではこのような感情の出し方をしないで
すからね。)
(ヒューストンの裸の大将)
これは、奇妙な出来事を引き寄せるオーラを発していると噂される隊員Xの経
験した話。ところで、アメリカの航空会社の機内サービスは良く言えばアット・
ホーム、悪く言えば粗雑、ひと言で言えば力強い(?)ものであります。(筆者
としては、どちらかと言うと「冷たい」感じさえあるJ社のサービスよりは好き
ですが。) しかし・・・
さて、件の隊員Xですが、ヒューストンへと飛ぶ機中、機内食のサービスがあ
ったのでステーキを注文。スチュワーデスが調子良くステーキを運んで来たまで
は良かった。ところが! なんと、スチュワーデスが隊員Xの席の上でトレーを
ひっくり返しそうになって、隊員Xの胸にステーキがビチャッ! 一瞬の沈黙。
スチュワーデスの反応やいかに?
スチュワーデス:シャツを脱いで下さい。
隊員X :・・・。(事態が理解できず何も答えられない)
スチュワーデス:私が洗いますからシャツを脱いで下さい。
隊員Xはこんなところで洗ったって乾くのだろうか、と疑問を感じながらも、
屈強のスチュワーデスに逆らってもしょうがないと、シャツを脱いでスチュワー
デスに渡したのでありました。
しかし、機内は結構寒い。替えの衣類はスーツケースのなか。隊員Xはヒュー
ストン到着まで毛布にくるまっている羽目になった。
やっとヒューストン着。案の定シャツは乾いていないと言う。これもアメリカ
流でベストを尽くした結果乾かなかったのでしょうがないじゃないか、という態
度。とりあえず汚れは落ちている。隊員Xはこれもゴチャゴチャ言っても始まら
ないととにかくシャツを受け取った。でも濡れていてとても着れた物じゃない。
スーツケースはバッゲイジ・クレイムまで行かないと出てこない。
隊員Xは意を決して山下清ばりのランニング姿でバッゲイジ・クレイムまで歩
くことにした。バッゲイジ・クレイムへと続く通路は結構混み合っていたが、X
のまわりには半径5mの無人の空間ができたとう。
(奇妙な団体)
太平洋の上を、何度も、それもエコノミー・クラスで飛んでいると、いろいろ
と奇妙な団体客と遭遇します。例えば、運用隊が良く使ったオランドー発、ダラ
ス/フォートワース経由の東京行き、アメリカン航空の61便は、フロリダ発と
いうことで中米系とおぼしき(いささか騒がしい)団体が乗っていたりしますが、
しかし、何と言っても、もっとも奇矯かつ悪質な団体客はニッポン人に違いない、
と筆者には思えます。
「旅の恥はかきすて」文化と言うか、海外旅行の解放感のなせる技と言うか、
とにかくお行儀が悪い。筆者の見た例でも、エコノミークラスの最前列、つまり
ノン・スモーキング・セクションの先頭で堂々と煙草をくゆらせ、スチュワーデ
スの制止もどこ吹く風、そのうちに機長まで出てきて連行された御人がいました。
連れが何人かいるようでしたが誰も注意せず。この人も一人旅ならこれほど強気
にはならなかったでしょう。(その後の運命は知りませんが。)
ちょうど運用隊が活動していた時期に、機中で酔ったあげく、スチュワーデス
に「俺は爆弾を持っている」と言ったばかりに飛行機が成田まで引き返した、と
いう事件がありました。(この事件には、爆弾の話をスチュワーデスが信じてし
まったので、あわてて取り消そうと「じょーだん、じょーだん!」と日本語で言
ったら相手はハイジャック犯がヨルダン[Jordan]に行け!と言っていると誤解し
て大事になったとの「冗談」あり。) この場合も、「爆弾犯人」氏は団体を引
率する立場だったようで、連れにかっこ良く見せようという心理が引き金になっ
ているようです。この爆弾騒ぎなどは希な話とは言え、みなさん、特に集団では
日本国内では考えられないような「リラックスした」行動をされる。大学生の一
団に囲まれたらもう悲劇、ストロボをポンポンたいて記念写真を撮るわ、席の間
を歩き回ってギャーギャー騒ぐわ、たまったものじゃない。まあ、夜行列車のス
キー客の"のり"とも言えますし、そもそもエコノミー・クラスで仕事に行くんじ
ゃない、と言われそうですが、しかし、公共交通機関のなかではもう少し公徳心
(!)に基づいて行動して欲しい、と、エコノミーに乗っている少数派のビジネ
ス客はみな苦々しく思っているのであります。日本はストレスの強い社会なので、
外に出たときによけい爆発してしまうのでしょうが、国際化の時代、どこにも「
外」は存在しないということを認識して欲しい。そういう意味では新婚旅行客は
無害。自分達だけの世界に入っていますから。
閑話休題。さて、高校生の集団に囲まれるとどうなるか。これも前項で登場し
た隊員Xの話。東京に向かう国際便、そのとき、Xが乗り合わせたのは帰国する
交換留学生(ホームステイ)、それも女子高校生の集団。離陸の時、アメリカの
知り合いと別れるのがつらいと方々でシクシク泣いていたという。最初から異様
な雰囲気。しかし、時間が経つうち、三人寄ればなんとやらで結構お喋りがかし
ましくなってきた。ゆっくり寝て帰ろうとしたあてがはずれたXは、勇気を振る
い起こして、
「僕は疲れているんだ、もう少し静かにしてくれ。」
と、注意した。沈黙。そのうちにXの周囲で女子高校生達は紙切れを回し始め
た。寝たふりをしているXの目の前を一枚のメモが通りすぎて行く。彼の鋭敏な
視力はそこに書かれている文字を読み取ってしまった。
へんな おじさん
第3章 ああ、レンタカー
(まず必要なもの:レンタカー)
さて、NASAに行く、ということは、アメリカの田舎に行く、というのとほ
ぼ同義です。運用隊員が出入りするのは、フロリダ州のケネディ宇宙センター(
KSC)、アラバマ州のマーシャル宇宙飛行センター(MSFC)、そしてテキ
サス州のジョンソン宇宙センター(JSC)の3カ所がほとんど。例外的にワシ
ントンDCのNASA本部に行くとき以外は、すべて、「ど」つきの田舎であり
ます(失礼!)。だいたい、アラバマ州がどこにあるか知っている人が世の中に
多くいるとは到底おもえません。そうでしょ。
アメリカ、と言えば、飛行機と車。飛行機から降り立ったら、とにかく車が無
ければ全く動きがとれない世界です。この実感が最初はなかなかつかめない。
しかし、例えば、KSCの近く、ココビーチにホテルを取ると「最寄り」のオ
ランドー空港からの距離約60マイル、時速100kmでぶっ飛ばして1時間の
彼方! ホテルからKSCの中のオフィスまで行くのも30分以上かかります。
それも30数分の間、信号で止まるのはせいぜい2回、あとゲートで1回止まる
だけ、残りは時速55マイル(約90km、いわゆるダブル・ニッケル、最も一
般的な制限速度。)ぐらいで走り続けての話です。要はやたらに広い。都会なら
ともかく、タクシーなんか殆ど見ることはない。そもそも、タクシーではNAS
Aの中に入って行けない! 街もゆったりと作ってあって、隣の建物に行くのも
大変。いや、ホテルから道路の反対側のレストランに行くのだって車でないと危
ないのです。ドライバーは、歩行者が歩いているとは夢にも思っていないのです
から、信号の所で横断しようとしても右左折車に巻き込まれるのがおち!
従って、必然的にレンタカーを借りることになります。レンタカー持たざれば
人にあらず。
(カウンターにて)
レンタカーは、空港で借りることになります。良くしたもので、空港のバッゲ
イジ・クレイムの側にレンタカー屋のカウンターが並んでいます。並んで、とい
うのは、エイビス、ハーツ、ナショナル、バジェット、ダラーといった大手レン
タカー屋が店を広げているからです。地元にしかないような無名のレンタカー屋
を探すとレンタル料がだいぶ安くなるようですが、保険のことを考えると大手の
方が良いようです。
さて、レンタカー屋で絶対必要なもの。
クレジット・カード
運転免許証
運転免許証は当然ですが、それより大切なものはクレジット・カード。もしク
レジット・カードを持っていないと法外なデポジット(保証金)を請求されます。
まあ、クレジット・カードがあると「信用される」という言い方がありますが、
私の感ずるところ、信用されるのはカードであって持ち主では無い。例えばクレ
ジット・カードで電話がかけられます。空港やホテルや飛行機の中などにある自
動読みとり式の電話機を使えばカードの磁気部分をさっと読ませるだけ、暗唱番
号も何も無しでOK(電話局側のコンピュータで番号のチェックはしているよう
ですが)。さらにオペレータを通せば、カード番号を言うだけで(有効期限を聞
かれることもありますが)電話できます。要は拾ったカードでも、人のカード番
号を覚えているだけでも良い! 電話局にしてみれば、カード使用者が誰であっ
ても料金はカード会社に請求すれば良いわけだし、カードを落とした人も、すぐ
カード会社に連絡すれば、たとえカードを使われてしまっても保険でカバーされ
るはずですから、一見、誰も損しない。レンタカー屋だってカード番号さえ押さ
えておけばたとえ車を乗り逃げされても安心なわけです。だからレンタカーを返
すときもまったくチェックはありません。あとで壊れているのを発見したら、ク
レジット会社に請求するだけ。全く問題無し。でも、良く考えてみると、結局、
保険などの経費は善良なカードユーザーが負担しているのですから、なんとなく
納得できない気分ですが、便利といえば大変便利なシステムではあります。いず
れにせよレンタカー屋やホテルではクレジット・カードが必需品。人は信用され
ない。
ところで、日本の国際運転免許証は(日本以外の国の国際運転免許証を見たこ
とはありませんが)とにかく免許証とは思えない代物なので、カウンターのオネ
エちゃんが慣れていないと、胡散臭そうな顔をしてしばらくいじくりまわしたり
します。そういう時はたいがい免許証番号を探しているのです。(コンピュータ
の端末に免許証番号をインプットしなければなりませんから) やっと番号を見
つけると、今度はそのあまりの長さに絶句する、というのが典型的パターン。と
ころで、この免許証番号の長さはお巡りさんに捕まったときにも役に立つそうで
すが、それはまた後の話で。日本人慣れしたカウンター嬢になると、住所をいち
いち聞いたりせずにいきなり紙を出して「これに住所を書いて!」と来ます。ま
あ、日本の訳のわからない地名を日本人の訳のわからない発音で聞き取るよりず
っと合理的。あとは投宿先や電話番号を聞かれます。
閑話休題。さて、次にカウンターで聞かれるのは保険。レンタカー料金には強
制保険が含まれているのですが、ここで聞かれるのは任意保険。車両保険、損害
賠償保険、搭乗者傷害保険といったものですが、車両保険に入っていないと、レ
ンタカーを壊した時に大枚の請求がありますし、なにより大きいのは損害賠償(
特に人をひいたときの!)です。アメリカでは人の値段が高い。これを払えない
とブタ箱入りの可能性すら有る。ということで、運用隊員には、とにかく任意保
険を必ずかけろ、わからなかったら、
Full insurance please!
と叫べ、と指導しているわけであります。この任意保険をかける場合もかけな
い場合も、契約書の所定の欄にサインしなければなりません。任意保険を拒否す
る場合にも、その意味を理解した上で、借り主が明確に意志表示したかたちを取
るわけです。恐らくレンタカー屋のマニュアルにあるのでしょう、カウンターで
それぞれの任意保険について必ず説明してくれたうえで、かけるか、かけないか
聞いてきます。
あとは、車種を選んで鍵を貰えば、いよいよ運転開始。
(鏡の中の世界)
さて、レンタカー屋のカウンターで鍵をもらって、借りた車をパーキングの中
で探し出すと運転開始です。(マイクロバスで連れていってくれるところもあり
ます。)
しかし、ちょっと待って。操作系を確認しましょう。
ざっと事項を挙げてみると、
シフトレバー
ウインカ
ワイパー
ヘッドライト
エアコン
窓の開閉
サイドブレーキ
シートの調整
サイドミラーの調整
ガソリン給油口
オート・クルージング
なんだ、始業点検じゃないか、しかし、アメリカの車は結構個性に富んでいる
ので最初が肝心です。
なお、運用隊は、何人かで一緒に乗ること、空港とホテルの行き来には巨大な
スーツケースを載せなければならないこと、レンタカー屋の持ち玉が多いこと、
事故の時の安全性など、いろいろ考えて4ドア・フルサイズを借りることにして
いました。従って、以下は4ドア・フルサイズ、それもGM車中心の情報です。
(GM車が多かったのは使ったレンタカー屋の偏りによる。同じレンタカー屋を
続けて使うとレートが安くなるのでどうしてもそうなる。その次に多かったのが
クライスラー。車種として一番多かったのはGMのシボレー・ルミナ[Chevrolet
Lumina]。)
アクセル、ブレーキは日本車と変わらない。しかし、コラムシフトのシフトレ
バーはハンドル右手側にあります。そしてウインカのスイッチはハンドル左手側
に。この鏡像関係が意外に厄介です。アメ車はもちろんオートマなので発信時に
D(ドライブ)に入れれば、あとはシフトレバーは用無しですが、ウインカを出
そうとしてギヤチェンジしてしまいそうになったりして。これが結構あるのです。
ウインカを反対に出してしまう人がいます。思うに、これは左に曲がるときは
「上」、右は「下」と覚えて(感覚的に理解して)いる人ではないでしょうか。
左手で操作するアメ車のウインカでは「上」は右、「下」は左です。正解は、ハ
ンドル軸中心の極座標で考えて曲がりたい(ハンドルを切る)回転方向にウイン
カレバーを廻せば良い。
レンタカーを借りて走り出す前に、ワイパーの操作を確認しておかないとひど
い目に会うことがあります。フロリダのにわか雨はまさにスコールそのもの。快
晴に油断してハイウェイを飛ばしていると一天にわかにかき曇りあっと言う間に
滝のような土砂降りになってしまいます。ワイパーをフルに動かさないと前が見
えない! ワイパースイッチがわからないからといって止まるのも命がけ(後ろ
から突っ込まれる!) 同様な理由でヘッドライトのスイッチも要確認。フロリ
ダの交通法規では雨天はヘッドライト点灯ですが、スコールの中では法規以前に
点灯しておかないと我が身が危ない。もっとも、この雨天点灯を知っていると雨
の降り出しを事前に察知できます。昼日中にあたりが晴れているのに対行車がラ
イトを点けていたら前方で雨が降っているということです。
アメ車は馬力に余裕があるので窓は閉め切ってエアコンをがんがん利かせて飛
ばすことになりますから、ウインドウの開閉はしなくて良いようなものですが、
ところがどっこいオランドー空港からココビーチまで続く528号線(Bee line
)には途中2ヶ所も料金所があって(料金は最初が1ドル、次が20セント。せ
こい!)、窓を開けねばなりません。どうせアメ車はみな電動、スイッチを探す
とどこにも無い。しばらく探したあと良く見ると手動式だったなどということが
ありました(とんだ恥かき)。レンタカー屋め、安物を掴ませやがって!
(レンタカーのトラブル)
アメリカのレンタカー屋は鷹揚なもので、レンタカーを借りるときも返すとき
も検査などしません。場所によっては走行距離やガソリン残量も客の自己申告で
す。もっともクレジット・カードを押さえている強みで後からいくらでも請求で
きますから。そのせいかどうか、あるいは整備工がいいかげんなのか、トラブル
持ちの車も結構あります。
筆者があるときオランドー空港で借りた車は、パーキングでトランクを開けよ
うとしたら鍵が回らない。エンジンキーの方は合っているので車違いではない。
ドアは開くので鍵違いでもない。(エンジンキーとドア/トランクキーは別物。
これは一説によればホテルの入り口などでエンジンキーをボーイに渡してパーキ
ングに入れて貰う、しかし、トランクの鍵は自分でキープしておく(つまり全幅
の信頼は置いていない!)ためだとのこと。) しばし格闘のあと、どうしても
トランクが開かないので係員を呼びに行って文句をつけると、俺に貸して見ろ、
といってガチャガチャいじっているとなんと開いてしまう。係員はこれでどうだ、
とばかりに勝ち誇ってキーを返してくれるのですが、自分で開けようとするとや
っぱり開かない。おかしい、どう考えてもレンタカー屋の駐車場係が私より器用
なはずはない、と思った刹那、はっと気がついたのでありました。そうだ!アメ
リカ流にいい加減にやればいいんだ! 私はそれまでキーをきっちりと止まるま
で差し込んで回そうとしていたのでした。アメリカ人みたいに適当にキーを差し
込んで回すとトランクは見事に開いたのでした。(要するにキーを途中まで差し
込んだ状態で回す!これは盲点。) さて、思わぬトラブル(?)でだいぶ時間
をロスしてしまった。急いでKSCに向かわないとセキュリティ・オフィスが閉
まってしまう。(セキュリティ・オフィスが閉まってしまえば入門バッジが取れ
ないので入構できない。) 早速出発したのは良かったのですが、何と右のウイ
ンカが点滅しないではありませんか。ウインカレバーを右に入れると点灯したま
ま、カチッカチッと反応しない。点きっぱなし。えいっままよ、時間もないしな
んとかなるさと走りだしたのですが車線変更をするときにウインカが点滅しない
のは恐いものです。悪いことにオランドー空港からKSCの方に行くには(Bee
line/East)空港周回道路を右へ右へ車線変更していかないとダメ。交通量も結
構多い。万止むを得ず、筆者はレバーを入れたり切ったり(!)手動でウインカ
を点滅したのでありました。
問題の車は次の日に別の車に替えて貰いましたが、敵も慣れたもので交換には
何の問題もありません。ただし、オランドー空港のレンタカー屋に電話をしたら
最初のうちは空港まで車を持って来いと言うので、そんな暇は無い(往復だけで
2時間)と頑張ったら今度はメルボーン空港ではどうかと言う。これでも往復1
時間はかかりそうだし道も知らないのでさらにゴチャゴチャ言って、結局ホテル
の近くの支店で替えさせることにする手間(議論)はかかりましたが。とにかく
アメリカでは自分の都合を徹底的に主張しないと負け。もっともホテルの近くの
支店はまことに小さく数台しか車を持っていないので、代車はマイアミから取り
寄せたとのこと。それでも夜に電話して翌日の昼には代車が準備されましたので
このあたりはさすがというべきでしょうか。
トラブルと言えば、交差点のど真ん中でエンストしたなどという恐ろしいこと
もあったそうです。しかも再スタート不能! あたりを見まわすと好運にも近く
にガソリンスタンドがあったので必死で車を押し込んで、そこからレンタカー屋
に電話したらすぐ代車を持ってきてくれたとのこと。しかし、フリーウェイの真
ん中でなくて運が良かった。
ところで右のウインカが点滅しないよ、は英語でなんと言うでしょうか。これ
は問題にしておきましょう。
(危機一髪)
あまりあるわけではないですが、やってしまうと恐いチョンボ。ガス欠。ガソ
リンを入れるのも面倒くさいし、あまり知らない店にも入りたくない。そこで給
油をぎりぎりに我慢しよう、という心理状態がガス欠への第一歩。燃料計が残量
ゼロになっていてもしばらく走れるので残量を気にしなくなるともう危ない。
ところで、KSCをはさんで、南北に流れる2本の大河、というか砂州で区切
られた広大な汽水域があります。アリゲーターやマナティも住んでいてとにかく
幅が広く海と呼んだ方がぴったりくるのですが、大西洋側がバナナ・リバー、大
西洋から遠い方のがインディアン・リバーと名付けられています。KSCは実は
この両リバーに挟まれた川中島の上にあります。そこでKSCから出るときも入
るときも、そしてKSCの周囲で東西に動くときも必ず河を渡ることになります。
ところが河中に航路があって結構大きい船が通ることもあるらしく、交通量の少
ない橋はハネ橋になっていますし、そのほかの橋は航路のところがものすごく高
くなっていて、言わば巨大なタイコ橋のような感じになっています。まあ、いつ
もならば何の問題もないのですが・・・
そのときは、勤務も終了して、夕食を食べに行こう、と1台の車に皆で乗って
走り始めたところでした。ふと気がつくと燃料計はゼロになっている。たいした
ことはない、途中で入れていこう。この時点では全然危機感が無い。道中、ガソ
リンスタンドは何軒もあるのですが、このスタンドは高いな、精算の都合もある
から前の給油と同じチェーン店にしよう、などと愚図愚図考えているうちに街中
を過ぎ、車は海の(河の)中道に入ってしまいました。ここまで来ると河を渡り
きらない限りガソリンスタンドは無い。すると、間の悪いことに突然アクセルの
反応がおかしくなり始めました。そう、ついにタンクのガソリンが底をついてエ
ンジンが息をつき始めたのです。まずいっ、と思っても先に進むしかない。エン
ジンは、それでも、なんとか動き続け、とうとう巨大タイコ橋の手前まで来まし
た。いよいよエンジンはスカッスカッといやな感じが強まりますが、車は最後の
パワーをふり絞って急斜面を登り始める。しかし、目の前には壁のようにそそり
立つ坂が待っています。高低差は30mもあるでしょうか。おかしい! 異変に
気付いた隊員達が叫ぶ。
「橋を渡ったらガソリンスタンドがある! 上まで昇ればいいんだ!」
「エンジンが止まったらニュートラルにして惰性で走れ!」
いくら惰性がついているといっても橋の頂点までたどりつかないことには話に
ならない。もし、たどりつかなかったら・・、隊員達の脳裏には、橋の急坂を重
いミニバンを必死で押し上げている、悲惨な光景がよぎったのでありました。な
にしろ引き返そうにも橋は上下線別なのでUターンもできない。前進あるのみ。
この何秒かの長かったこと。
ようやく、やっとの思いで、まったくもって好運にも車は頂点まで登りきり、
他の車にどんどん抜かれるのもおかまいなし、アクセルを絞って橋の下のガソリ
ンスタンドまでゆるゆると走って行きます。エンジンはまだ止まらない。ガソリ
ンスタンドに滑り込んで、給油機のわきに止まって、さて、エンジンを切ろうと
した瞬間、エンジンはついに息絶えたのでありました。
(ガス・ステーションにて)
ガス・ステーション、つまりガソリンスタンドではセルフサービスで給油する
ことになりますが、運用隊が活動したKSC周辺(オランドー、ココビーチ、タ
イタスビルなど)、MSFC周辺(ハンツビル)、JSC周辺(ヒューストン、
クリアレイク)でそれぞれ雰囲気が違っています。
一番恐い、と言うか厳重なのがヒューストンです。あるとき、夜の8時過ぎに
ガソリンスタンドに入ったら、なにやらスピーカーが叫び始めた。良く聞いてみ
ると、
「クレジット・カードか現金だけ。現金なら最初にデポジットを置いて行け、
お釣りは無い。」
と言っている。見回してみるとガス・ステーションの一角に駅の切符売り場の
ような窓口があって中の係員がマイクで喋っている。係員はけっして出てこない。
要はセキュリティのためになるべく現金を置かず、不用意に外に出ないようにし
ているらしい。それで「給油逃げ」を防ぐために最初にカードかデポジットを出
させるシステム。多分、窓口の中でスイッチを入れないと給油できないようにな
っているのだろう。ご丁寧にカードリーダーが給油機ごとに付いている。
まあ、夜間の合理化策なのでしょうが、窓口のカウンターの下には銃を置いて
いるに違いない、と思うとあまり気持ちの良いものではない。
それに比べるとココビーチやハンツビルのガス・ステーションは、はるかに寛
容なシステムです。勝手に空いている給油機を使って、給油してから、レジに行
って代金を払えば良い。給油逃げも可能かも知れませんが、そもそもアメリカで
はガソリンがものすごく安い。1ガロン(3.8 )で1.1〜1.2ドルぐらい
ですから日本のざっと3分の1。残量ゼロから満タンにしても15ドルもあれば
済む。日本のガソリンがいかに高いかということですが、アメリカでももう少し
税金を取れば良いのにと思ってしまいます。(もっともガソリン税の増税はなか
なか議会を通らない。)
ところで、アメ車のガソリン給油口は左にある場合もあれば右にある場合もあ
って、事前に確認しておかないとガス・ステーションに止めてから戸惑うことに
なったりします。戸惑うと言えば、筆者は、一回だけ、キャデラックを運転した
ことがありますが、給油口の蓋の開け方がわからなくて困ったことがありました。
シボレーなどの普及車の給油蓋は、鍵もなにも無し、指で開けるだけ、シンプ
ルそのものです。ところが問題のキャデラックの蓋を見ると指を入れるへこみも
隙間も無い。これはてっきり運転室内にスイッチがあると思い、室内をくまなく
探してもそれらしきものは無し。しょうがないのでマニュアルを探したがこれも
無し。いよいよ困って、蓋をたたいたらポンと開いた、というお粗末。つまり、
蓋を押し込むとロックがはずれる単純な構造だったわけです。高級車だという先
入観が敗因。これでロスした時間、約30分。
(恐怖の米国出張編その1 完)
[宇宙先端 第9巻第2号(1993年3月号)収録]